君の瞳、月のひかり








 真夜中、目を覚ましたベッドの中には、ぽっかりと何かが欠けている。
 それは、となりの空虚。おしつけられたシーツのくぼみに残っている、温もりもかすか。
 開け放たれた窓辺にたてば、君はベランダで月を見あげてる。

 なにしてるの?
 考えていたんです。

 君の瞳、ガラス玉みたいに、透き通ってまっすぐな視線。

「もし、私がいなくなったら」
「私を想って、あなたは泣いてくれるのでしょうか」

 冷たくて固い言葉。それは月のひかりのように。
 僕も並んで月を見上げる。

 僕も思うんだ。
 もし、僕が死んだら、君は泣いてくれるのかなって。

 君からの答えは聞こえない。ただ、君は黙って僕を胸に抱いてくれる。

 やわらかにつつみこむぬくもり。それは月のひかりのように。







<終わり>
<戻る>