へなちょこ芹香ものがたり

その7「魔女、聖夜」








「と言うわけで、そろそろお開きにするかぁ」

「……皆様、お疲れ様でした」

 宴もたけなわ、クリスマスパーティ。
 食い物・飲み物が底を尽きかけた頃を見計らって、お決まりのセリフを口に
する俺。

「ふーにゃー、まだまだ飲むのですぅ〜」

 いや メチルは本当にもう在庫ないから勘弁してくれ。

「そうよそうよ、まだまだ飲むわよう!」

「……セリオ、こいつら頼む」

「はい」

 マルチと綾香を引きずって、セリオは階段を上って行った。
 はふぅ……後片付けはセリオがやってくれるだろうから、俺は風呂に入って
寝るとするか。

 と、着替えを取りに行こうとしたら。
 ワイングラス片手の先輩に、服の裾を引っ張られた。

「ん?」

「…………」
 浩之さん、少しお話しましょう
 何かお話しましょうだってさ。
 うーん、先輩も少し酔ってるみたいだけどな。

「うん、いいよ」

 先輩の隣に座り込むと、ふんわりいい香りが漂って来て。
 それに混じって、ワインの香りが俺の鼻をくすぐる。

「…………」
 2人っきりって、珍しいれすね
「そうだな。みんながいるから、滅多に2人っきりになれなかったし」

 俺が頷くと、先輩は俺の肩にもたれかかって来て。
 ぽふんと顔を埋め、抱き付いて来た。

 2人になれないことが嫌なわけではない。
 むしろ、みんなといればそれはそれで楽しいのだが。

 だけど、たまにはこうして2人っきりでいる時間も欲しいじゃないか。

「でも、今夜は2人っきりだね」

 セリオなら、戻って来ても気を利かせてくれることだろう。
 だから、今夜はもう先輩と一緒に過ごすことに決めた。

「…………」
 ……はい
 ぎゅっと先輩の身体を抱きしめると。
 お酒のせいで力が抜けているのか、先輩はくたっと抱き寄せられて。

「先輩、飲み過ぎたんじゃない? 大丈夫?」

 真っ赤な顔の先輩を心配してそう言うと。
 全然大丈夫じゃなさそうに、何度もこくこく頷く先輩。

「…………」
 大丈夫なのれす
 ろれつの回っていない声で『大丈夫』と言われても。

「やっぱ駄目だ先輩、今夜はもう寝よう」

 こんなに酔ってるんだから、一緒にお風呂に入るわけにも行かないしな。

「…………」
 まだお話していたいれす
「わかったわかった、一緒に寝るから話はベッドでね」

「…………」
 はい
 こくこく。

 先輩を軽く抱き上げ、2階へ向かう俺。
 先輩は目を閉じて、俺の首筋にしっかり抱き付いていて。

 一緒にベッドに入った頃には、可愛い寝息を立てていた。
 そんな先輩に、軽く口付けして。

「おやすみ、先輩」

 俺も、ゆっくりと目を閉じるのであった。






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