へなちょこ芹香ものがたり

その11「魔女とお酒」








 こくっ、こくっ……ふぅ。

「あれ、何飲んでるの?」

「…………」
 お酒です
「お酒? そりゃいけないなぁ、仮にも未成年が」

「…………」
 毎晩の不純異性交遊はいいいんですか?
「うっ、それを言われると困る」

 こう見えても学校ではそれなりに優等生? で通っているんだ。
 つーかクラスメイトには、この同棲状態はバレバレだけどな。

「…………」
 折角ですから、浩之さんも如何ですか?
「あ、俺も? そうだな、月も綺麗だし……飲もうか」

 窓から覗く、満月。
 先輩は、これを肴に飲んでいたのだろうか。

 春は夜桜、夏は星。秋は満月、冬は雪。
 それで十分、酒は美味い。
 傍に先輩がいるなら、尚更美味いことだろう。

「コップか何か持って来るよ」

「…………」
 あ、これでよければ
 すいっ。

 今まで先輩が使っていたマグカップが差し出される。
 つーかこれって……間接キスの申し出?

「そっか、先輩がいいんならそれで一緒に飲もう」

 こくこく。

 嬉しそうに先輩は微笑む。
 俺はマグカップを受け取り、先輩の隣に座りながら中身を口に含む。
 ……ウィスキーの薄い水割りか、口当たりは柔らかい。
 なるほど、先輩がごくごく飲むわけだぜ。

「先輩、薄めてても飲み過ぎには注意な」

「…………」
 はい
 こくこく。

 ……そうは言っても、顔は真っ赤で身体は傾いている。
 仕方がない、俺の身体で支えよう。

 ぽふっ。

「先輩、大丈夫? 随分飲んだんじゃないの?」

「…………」
 大丈夫です
 うーん、大丈夫かなぁ……とか思いながら、水割りを流し込む。
 少し喉から先が熱くなる感覚を楽しみながら、先輩を見ると。

 はぷー……。

「先輩、何かもう限界って顔してるけど……」

 ふるふる。

 ……まだ大丈夫だと言い張るか、このお嬢様は。

「あまり飲むと身体に悪いよ? 今日はこの辺にしとこうぜ」

 ふるふる。

「え? お酒は飲まないから、もう少しこうしていたい?」

 こくこく。

 仕方ないなぁ……んじゃ、俺は先輩の作った水割りでも飲むとするか。
 んくっ……ぷはぁ。

「…………」
 美味しいですか?
「ああ、美味いよ。先輩が傍にいるからね」

 ……ぽっ。

「あっはっは、余計に赤くなってる」

 酒のせいで真っ赤になりきったと思っていたが、まだ赤くなる余裕があった。
 もう少しからかおうかなぁ?

「…………」
 もう、浩之さんたら
 ぽふん。

「ふっふっふ」

 酔ったせいか知らないが、怪しい笑いを漏らす俺。
 そんな俺に、先輩は幸せそうに頭をすり寄せるのであった。






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